地学基礎⑫:大気の構造と熱収支
ちさまる
ねえ、どうして山の上に登ると寒くなるんだろう? 太陽に近づいているはずなのに不思議だよね。
それに、夜になって太陽が沈んでも、地球が急に凍りつかないのはなぜ?
今回は、空気がどうやって地球を包み込んでいるか、そして太陽のエネルギーをどうやってやり取りしているか、2024年・2025年の共通テストで詳しく問われた「熱の収支」について探究するよ! PON!
1. 大気の組成と気圧
地球を取り巻く大気は、高さ約100km以上の薄い層です。その成分(乾燥空気)の割合は場所によらずほぼ一定です。
- 窒素 ($N_2$): 約78%
- 酸素 ($O_2$): 約21%
- アルゴン ($Ar$): 約0.9%
- 二酸化炭素 ($CO_2$): 約0.04%(増加傾向)
※水蒸気 ($H_2O$) は場所や天気によって $0 \sim 4\%$ 程度と大きく変動するため、上記の乾燥空気の割合からは除外して考えます。
気圧の変化(半減の法則)
気圧は、その上にある空気の重さです。地上の平均気圧は約 $1013\text{hPa}$ ですが、上空に行くほど空気の層が薄くなるため、気圧は下がります。
重要な法則として、「高さが約5.5km上がるごとに、気圧は約半分になる」という性質があります。(例:地上が1000hPaなら、5.5km上空は500hPa、11km上空は250hPa)。
2. 大気の層構造(4つの層)
大気は、高さごとの温度変化の傾向によって、下から4つの層に区分されます。
| 層の名前 | 高度範囲 | 温度変化 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 対流圏 | 0 〜 約11km | 低下する (0.65℃/100m) |
水蒸気のほとんどが存在し、雲や雨などの気象現象が起こる。 |
| 成層圏 | 〜 約50km | 上昇する | 高度20〜30km付近にオゾン層が存在し、紫外線を吸収して加熱されるため温度が上がる。大気が安定している。 |
| 中間圏 | 〜 約80km | 低下する | 上端は大気中で最も低温(約-90℃)になる。 |
| 熱圏 | 80km 〜 | 上昇する | 太陽からのX線などを吸収して高温になる。オーロラが発生する場所。 |
3. 雲の形成と【発展】大気の安定・不安定
断熱膨張による雲の形成
空気塊が上昇すると、周囲の気圧が下がるため、空気塊は膨張します。気体が外部へ仕事をして膨張すると、内部のエネルギーが使われるため温度が下がります。これを断熱膨張(だんねつぼうちょう)といいます。
温度が露点以下になると、水蒸気が凝結して水滴(雲粒)となり、雲ができます。
コレクトの発展解説:潜熱と大気の安定性
潜熱(せんねつ)の放出(2024年共テの重要テーマ):
水蒸気が水滴に変わる(凝結する)とき、周囲に熱エネルギーを放出します。これを潜熱(凝結熱)といいます。台風や積乱雲が発達する猛烈なパワーの源は、この潜熱です。
大気の安定・不安定:
上空に行くほど気温が「急激に」下がっている場合、上昇した暖かい空気塊は、周囲の冷たい空気よりも軽いため、さらに上昇を続けようとします。この状態を大気が不安定であるといい、積乱雲(雷雲)が発達しやすくなります。
4. 地球が受ける太陽放射とエネルギー収支
地球の気候を決めるのは、太陽から入ってくるエネルギーと、地球から出ていくエネルギーのバランスです。
可視光線と赤外線
- 太陽放射(短波放射): 太陽(約6000K)が出すエネルギー。主に可視光線(目に見える光)として届きます。
- 地球放射(長波放射): 地球(約300K)が出すエネルギー。すべて赤外線(熱線)として宇宙へ放出されます。
太陽定数とアルベド
大気圏外で太陽に垂直な面 $1\text{m}^2$ が1秒間に受けるエネルギー量を太陽定数といい、約 $1.37\text{kW/m}^2$ です。
地球に届いた太陽放射のうち、約30%は雲や地表面で反射されてそのまま宇宙へ戻ります。この反射率をアルベドといいます。残りの70%が地球(大気と地表)に吸収されます。
ちさまると挑戦! 地球の熱収支
ちさまる
「入ってくるエネルギー」と「出ていくエネルギー」は最終的に釣り合っているから、地球の温度は一定なんだね。
でも、温室効果ガスがある場合、地表面でのやり取りはどうなるんだろう? 共通テストでよく出る「矢印の計算」に挑戦だ!
【例題1】熱収支の計算(共通テスト頻出)
次の図は、地球全体のエネルギー収支を模式的に表したものである。大気圏外から入ってくる太陽放射を $100$ としたとき、以下の数値を用いて、地表面から大気へ放出される正味の放射量や、温室効果による再放射量を計算せよ。(※数値は一例であり、問題ごとに異なります)
- ① 入射する太陽放射:$100$
- ② 宇宙への反射(アルベド):$30$
- ③ 大気による太陽放射の吸収:$20$
- ④ 地表面による太陽放射の吸収:$50$
- ⑤ 地表面からの赤外線放射(全量):$104$
- ⑥ 対流・蒸発による地表から大気への熱輸送:$30$
- ⑦ 大気から地表面への再放射(温室効果):$X$(求めよ)
問:地表面におけるエネルギーの釣り合い(入る熱=出る熱)の式を立て、大気からの再放射 $X$ の値を求めよ。
解答と解説を見る
【解答】 $X = 84$
【解説】
地表面に「入ってくるエネルギー」と「出ていくエネルギー」は釣り合っています。
[入] 太陽放射の吸収(④) + 大気からの再放射(⑦)
[出] 地表面からの赤外線放射(⑤) + 対流・蒸発(⑥)
式を立てると:
$$ 50 + X = 104 + 30 $$
$$ 50 + X = 134 $$
$$ X = 84 $$
この「大気からの再放射($84$)」こそが温室効果の正体です。これがあるおかげで、地表面は太陽から直接もらう熱($50$)よりもはるかに多くの熱を受け取り、平均気温が約15℃に保たれています。
5. 放射冷却と天気図(2025年 共通テスト傾向)
夜間、太陽からの加熱がなくなると、地表面は赤外線を宇宙空間へ放出し続けるため、温度が下がります。これを放射冷却といいます。
コレクトの気象解析:冷え込みが強まる条件
2025年の共通テストでは、天気図から放射冷却が強まる場所を判断する問題が出題されました。放射冷却が強まり、朝の冷え込みが厳しくなる条件は以下の2つです。
- よく晴れていること(雲がない): 雲は布団のような役割(温室効果)を果たし、地面からの赤外線を吸収して地表へ送り返してしまいます。雲がないと、熱が宇宙へ逃げ放題になります。
- 風が弱いこと: 風が強いと、上空の暖かい空気と地表付近の冷たい空気が混ざってしまい、温度低下が妨げられます。風が弱ければ、冷たい空気が地表付近に溜まります。
【天気図での特徴】
高気圧に覆われて等圧線の間隔が広い(風が弱い)場所、特に内陸の盆地などで顕著に発生します。
ちさまるの総仕上げ! 練習問題
大気の層構造や温室効果の仕組みをしっかり区別できているか、確認しよう!
問1(選択・基本)
大気の層構造に関する記述として、最も適当なものを1つ選べ。
- 対流圏では、高度が高くなるにつれて、地球表面からの放射の影響が小さくなるため気温が低下する。
- 成層圏では、オーロラが発生し、高度が高くなるにつれて気温が上昇する。
- 中間圏では、オゾン層が存在するため、高度が高くなるにつれて気温が上昇する。
- 熱圏では、大気の対流が活発であり、雲や降水現象が見られる。
コレクトからの挑戦状(国公立大 二次試験・思考力)
問2(記述・発展:温室効果のメカニズム)
二酸化炭素や水蒸気などの温室効果ガスが、地球の気温を上昇させる仕組みについて、「太陽放射(可視光線)」と「地球放射(赤外線)」という2つの語句を用い、それぞれの波長に対するガスの性質(透過・吸収)に触れながら、60字以内で説明せよ。
問3(応用・2025年傾向)
ある冬の日の夜明け前、A地点(沿岸部、曇り、風速5m/s)とB地点(内陸部、快晴、風速1m/s)の気温を比較したとき、B地点の方が顕著に気温が低くなっていた。B地点で気温が下がった主な原因となる現象名を答えよ。
練習問題の解答と解説
問1:i
【解説】
i:正解。対流圏は地面で温められた空気が上昇する層であり、熱源(地面)から離れるほど寒くなります。
ii:成層圏で気温が上がるのは「オゾン層」があるためです。オーロラは熱圏です。
iii:中間圏はオゾン層がなく、冷え込んでいく層です。
iv:熱圏は超高温ですが空気が薄すぎて対流は起きません。気象現象は対流圏です。
問2:解答例
温室効果ガスは、短波長の太陽放射は透過させるが、地表からの長波長の地球放射(赤外線)はよく吸収し、地表へ再放射するため。(60字)
【解説】温室効果のポイントは「太陽の光(可視光線)は通すけど、地球の熱(赤外線)は逃さない」という選択的な吸収特性にあります。ビニールハウスのガラスと同じ原理です。
問3:放射冷却
【解説】「内陸」「快晴(雲がない)」「風が弱い」という条件は、放射冷却が強まる典型的なパターンです。地表の熱がどんどん宇宙へ逃げていくため、朝の冷え込み(底冷え)が厳しくなります。