地学基礎①:地球の概観と構造
ちさまる
ぼくたちの足元に広がる地球。当たり前のように存在しているけど、その「本当の姿」や「内部の仕組み」をどこまで知っているかな?
昔の人がどうやって地球の大きさを測ったのか、そして目に見えない地球の奥深くがどうなっているのか。共通テストから二次試験まで狙われる超重要ポイントを、一気に整理してマスターするよ! 目指せ、地学マスター! PON!
1. エラトステネスの地球測定と北極星の高度(2023年共通テスト出題)
紀元前3世紀、ギリシャの学者エラトステネスは、同一経度上にある2地点(シエネとアレクサンドリア)の距離と、夏至の日の太陽の南中高度の差から、人類で初めて地球の全周を科学的に計算しました。彼が導き出した約46,000kmという値は、実際の全周(約40,000km)に驚くほど近いものでした。
現代の大学入試において、この原理を応用して頻出するのが「北極星の高度を用いた緯度計算」です。
コレクト
地球を完全な球体とみなした場合、ある地点での北極星の高度(仰角)は、その地点の緯度と完全に一致します。
したがって、同一の子午線(経線)上にある2地点における北極星の高度差は、そのまま2地点間の「緯度差(=地球の中心角)」となります。
2地点間の距離を $l$、緯度差を $\theta^\circ$、地球全周を $L$ とすると、円弧の長さは中心角に比例するため、次の式が成立します。
$$ 360^\circ : \theta^\circ = L : l $$この基本公式は、地球の大きさや半径 $R$ ($L = 2\pi R$)を求める問題の土台となるため、必ず定着させてください。
2. 地球楕円体の定義と扁平率
エラトステネスの時代には地球は「完全な球」と考えられていましたが、実際には地球は自転しています。17世紀、アイザック・ニュートンは、自転による遠心力の影響で赤道付近が膨らみ、地球は「赤道半径が極半径よりも長い回転楕円体(地球楕円体)」になっていると予言しました。
扁平率(へんぺいりつ)の計算
地球の「つぶれ具合」を示す指標を扁平率($f$)と呼びます。赤道半径を $a$、極半径を $b$ としたとき、扁平率は以下の式で表されます。
$$ f = \frac{a - b}{a} $$現在の地球の赤道半径 $a$ は約 $6378\text{km}$、極半径 $b$ は約 $6357\text{km}$ であり、扁平率はおよそ $1/298$ となります。
※なお、自転周期が短く(自転が速く)遠心力が大きい惑星ほど、扁平率は大きくなります。例えば、木星の扁平率は約 $1/15$、土星は約 $1/10$ に達します。
3. 地球の表面起伏(金星・火星との比較)
惑星の表面の高さ(標高および水深)の割合を示したグラフを高度分布曲線(ヒプソメトリック・カーブ)と呼びます。これを見ると、地球が太陽系の中でいかに特殊な惑星であるかが一目で分かります。
コレクト
【地球の特徴:2つのピーク】
地球の高度分布には、標高 $0 \sim 1\text{km}$ 付近(大陸)と、水深 $4 \sim 5\text{km}$ 付近(海洋底)の2つの明確なピーク(双峰性)が存在します。これは、地球の表層が密度の小さい「厚い大陸地殻(花崗岩質)」と、密度の大きい「薄い海洋地殻(玄武岩質)」という2種類の異なる岩石で構成されているためです。
【金星・火星との比較:1つのピーク】
一方、金星や火星の高度分布曲線にはピークが1つ(単峰性)しかありません。これは、表面を覆う地殻の成分がほぼ一様(主に玄武岩質)であり、地球のような大陸と海洋の明確な二極分化が起きていないからです。
※よくある正誤問題の注意点:「地球の最高点(エベレスト:約8.8km)と最低点(マリアナ海溝:約10.9km)の高低差は約20kmあるため、地球は起伏に富んだいびつな形である」という記述は誤りです。地球の半径(約6400km)に対して20kmはわずか0.3%にすぎず、宇宙から見れば非常に滑らかな球体と言えます。
4. 【発展】重力と地磁気
① 地球の重力
私たちが地球上で感じる重力は、地球と物体の間に働く「万有引力」と、地球の自転によって生じる「遠心力」の合力です。
重力の大きさは、地球上の場所(緯度)によって異なります。入試では以下の理由を論述・選択させる問題が頻出します。
- 極で重力が最大になる理由:
遠心力がゼロであることと、地球が楕円体であるため極付近の方が地球の中心に近く、万有引力が強くなるため。 - 赤道で重力が最小になる理由:
遠心力が最大(外側に引っ張られる力が最大)になることと、地球の中心から最も遠く、万有引力が弱まるため。
② 地磁気(地球の磁場)
地球は巨大な磁石のような性質を持っています。これを地磁気と呼びます。地磁気は、地球を太陽風や有害な宇宙線から守るバリアの役割を果たしています。
コレクト
地磁気が発生するメカニズムは「ダイナモ理論」で説明されます。地球内部の「外核」は液体の鉄・ニッケルでできており、この導電性の液体が対流することで電流が生じ、強力な磁場が形成されていると考えられています。
また、地磁気のN極とS極は過去に何度も入れ替わっており(地磁気の逆転)、海底の岩石に残された残留磁気の縞模様が、後にプレートテクトニクスを証明する決定的な証拠となりました。
5. 地球内部の層構造(2026年共通テスト出題)
地球の内部は直接掘って調べることはできません。科学者たちは、地震波(P波とS波)の伝わり方(速度の変化や反射・屈折)を解析することで、内部が層構造になっていることを突き止めました。
地震波の速度が急激に変化する境界を不連続面と呼びます。
| 層の名前 | 深さ | 状態 | 主な構成物質 |
|---|---|---|---|
| 地殻 大陸地殻 / 海洋地殻 |
0 〜 約30km (海洋底では約5〜10km) |
固体 | 花崗岩質岩石(上部) 玄武岩質岩石(下部・海洋) |
| モホロビチッチ不連続面(モホ面) | |||
| マントル | 〜 約2900km | 固体 | かんらん岩質岩石 (鉄やマグネシウムを含むケイ酸塩) |
| グーテンベルク不連続面 | |||
| 外核 | 〜 約5100km | 液体 | 鉄・ニッケル |
| レーマン不連続面 | |||
| 内核 | 〜 約6400km(中心) | 固体 | 鉄・ニッケル |
ちさまる
えっ、外核って「液体」なの!? マントルはドロドロのマグマかと思ってたけど「固体」なんだね!
コレクトの補足:その通りです。マントルは固体ですが、長い時間をかけると水飴のようにゆっくりと流動します(マントル対流)。一方、外核が液体であることは、「横波であるS波が外核を通過できない(S波のシャドーゾーンが存在する)」という事実から証明されています。
6. リソスフェアとアセノスフェア(流動性による区分:2022年・2024年共通テスト出題)
先ほどの地殻・マントル・核という分類は「物質(化学組成)」によるものでした。しかし、地球を「物質の違い(岩石か金属か)」ではなく、「流動のしやすさ・硬さ(力学的性質)」を根拠に区分したものが必要です。リソスフェアとアセノスフェアです。これが「プレート」の定義に直結します。
- リソスフェア(岩石圏):
地殻と、マントルの最上部の硬い部分を合わせた層。厚さは約100km程度で、カチカチの硬い岩盤です。これこそが、地球の表面を覆う十数枚の「プレート」の正体です。 - アセノスフェア(岩流圏):
リソスフェアの直下(深さ100km〜250km付近)にあるマントルの一部。高温のため岩石がわずかに溶けており(部分溶融)、柔らかく流動性があります。地震波の速度が遅くなるため低速度層とも呼ばれます。この層の上を、硬いリソスフェア(プレート)が滑るように移動します。
7. 【発展】アイソスタシー(地殻均衡)
なぜ高い山は沈まずにそびえ立っているのでしょうか。それは、氷山が海に浮いているのと同じ原理で説明できます。この地殻とマントルの力学的均衡状態をアイソスタシーと呼びます。
コレクト
アイソスタシーの代表的なモデルとして「エアリーのモデル」があります。これは、「地殻の密度はどこでも一定であり、密度の大きいマントルに浮いている」と考えるものです。
氷山が水面から高く出ているほど、水面下には巨大な氷が沈んでいるように、標高の高い山脈の下には、その重さを支えるために地殻がマントル深くまで突き出した「山の根(root)」が存在します。
したがって、「標高が高い場所ほど、地殻は厚い(モホ面が深い)」という関係が成り立ちます。
(※過去に分厚い氷床に覆われていたスカンディナビア半島が、氷が融けたことで重りがなくなり、現在もアイソスタシーを回復するために年間数mm〜1cmのペースで隆起し続けている現象は、入試頻出の具体例です。)
ちさまると挑戦! 例題で確認しよう
ちさまる
ここまで学んだことを使って、実際に出題されるパターンの問題に挑戦してみよう! 共通テストでもよく見る形だよ!
【例題1】北極星の高度と地球の大きさ(頻出計算)
同一の子午線(経線)上にある地点Aと地点Bがある。地点Aで北極星の高度を観測したところ $35^\circ$ であり、地点Aから真北へ直線距離で $888\text{km}$ 移動した地点Bで観測したところ、北極星の高度は $43^\circ$ であった。地球を完全な球体とみなしたとき、地球の全周は何 $\text{km}$ か。有効数字2桁で答えよ。
解答と解説を見る
【解答】
$4.0 \times 10^4 \text{km}$ (または $40,000 \text{km}$)
【解説】
1. 北極星の高度は、その地点の緯度に等しい。
地点Aの緯度は北緯 $35^\circ$、地点Bの緯度は北緯 $43^\circ$。
2. 2地点間の緯度差 $\theta$ は、 $43^\circ - 35^\circ = 8^\circ$。
3. 緯度差 $8^\circ$ に相当する弧の長さが $888\text{km}$ であるから、地球の全周 $L$ は比例式を用いて計算する。
$8^\circ : 360^\circ = 888\text{km} : L$
$L = 888 \times \frac{360}{8} = 888 \times 45 = 39960\text{km}$
4. 有効数字2桁に丸めると、$4.0 \times 10^4 \text{km}$ となる。
【例題2】地球の表面起伏
地球の高度分布(ヒプソメトリック・カーブ)において、面積の割合を示すピークが2つ存在する理由として、最も適当なものを次の選択肢から1つ選べ。
- 海溝や海嶺などの海底地形が、プレートの運動によって複雑に形成されているため。
- 自転の遠心力により、赤道付近が膨らみ、極付近が潰れた回転楕円体となっているため。
- 地球の表面が、密度の小さい大陸地殻と、密度の大きい海洋地殻という2種類の異なる岩石で構成されているため。
- 月に比べて強い重力を持つため、大気や海水が引きつけられ、海面という明確な基準面が存在するため。
解答と解説を見る
【解答】
3
【解説】
地球の高度分布に標高約 $0\text{km}$(大陸)と水深約 $4\sim5\text{km}$(大洋底)の2つのピークが存在するのは、大陸地殻(花崗岩質・低密度・厚い)と海洋地殻(玄武岩質・高密度・薄い)という異なる地殻が存在し、それぞれがマントル上でアイソスタシー(地殻均衡)を保って浮いているためです。
金星や火星は地殻がほぼ1種類であるため、ピークは1つしかありません。
ちさまるの総仕上げ! 練習問題
基本から発展・入試レベルまで用意したよ! これが解ければこの単元は完璧だね。PON!
問1(選択・基本)
地球の形状と重力に関する記述として、誤っているものを1つ選べ。
- 地球の扁平率は約 1/298 であり、極半径よりも赤道半径の方が長い。
- 地球の重力は万有引力と遠心力の合力であり、赤道上で最大となる。
- 地球の自転速度が現在よりも速かった場合、扁平率は大きくなると考えられる。
- 地球を完全な球体とみなした場合、極付近を通る子午線1周の長さは約4万kmである。
問2(選択・標準)
地球の内部構造に関する記述として、最も適当なものを1つ選べ。
- 地殻とマントルの境界はグーテンベルク不連続面とよばれる。
- アセノスフェアはリソスフェアの上部に位置し、剛体として振る舞う。
- 外核は主に鉄やニッケルからなり、液体状態であるためS波が伝わらない。
- 海洋地殻は大陸地殻よりも厚く、花崗岩質の岩石で構成されている。
問3(記述・発展)
地震波の観測において、震央から角距離で約103度〜143度の範囲には、P波もS波も直接到達しない「シャドーゾーン(影の帯)」が存在する。この現象が生じる理由を、「外核の状態」と「地震波の性質」という語句を用いて、60字以内で説明せよ。
問4(計算・入試レベル)
エアリーのアイソスタシーモデルに従い、標高 $4\text{km}$ の山脈の下にある「山の根(平野部の地殻下端より深く突き出た部分)」の深さ $d$ を求めよ。また、その地点における地殻の全厚さ(山頂から地殻下端まで)を求めよ。
ただし、標高 $0\text{m}$ での大陸地殻の厚さを $35\text{km}$、大陸地殻の密度を $2.7\text{g/cm}^3$、マントルの密度を $3.2\text{g/cm}^3$ とする。
練習問題の解答と解説
問1:ii
【解説】重力は万有引力と遠心力の合力です。遠心力は赤道で最大(外に引っ張る力が強い)となるため、重力は赤道上で最小、極で最大となります。
問2:iii
【解説】
i:地殻とマントルの境界は「モホロビチッチ不連続面」。グーテンベルク面はマントルと外核の境界。
ii:アセノスフェアはリソスフェアの「下部」にあり、流動性(部分溶融)を持ちます。
iv:海洋地殻は大陸地殻より「薄く」、玄武岩質の岩石で構成されます。
問3:解答例
外核は液体状態であるため横波のS波が伝わらず、P波は外核に入る際に大きく屈折し、到達できない領域ができるため。(56字)
【解説】外核が液体であることが最大のポイントです。液体はせん断応力を伝えないため、横波(S波)は通過できません。P波(縦波)は液体も通過できますが、マントル(固体)から外核(液体)へ入る境界で速度が急激に遅くなり、大きく内側に屈折するため、特定の範囲に届かなくなります。
問4:山の根 $21.6\text{km}$ / 全厚 $60.6\text{km}$
【解説】
「ある一定の深さ(補償面)より上にある柱の質量は、どこでも等しい」と考えます。山の根の深さを $d \text{ (km)}$ とすると、以下のつり合いの式が成り立ちます。
$$ 2.7 \times (4 + 35 + d) = 2.7 \times 35 + 3.2 \times d $$
計算を整理すると:
$$ 10.8 + 94.5 + 2.7d = 94.5 + 3.2d $$
$$ 10.8 = 0.5d \quad \rightarrow \quad d = 21.6\text{km (山の根)} $$
地殻の全厚さは、山頂から地殻下端までを足し合わせて:
$$ 4 + 35 + 21.6 = 60.6\text{km} $$