地学基礎⑬:大気の大循環と世界の気候
ちさまる
日本の上空にはいつも西風(偏西風)が吹いているけど、赤道の近くでは東風が吹いているんだって。
どうして地球の場所によって風向きが違うんだろう?
実はこれ、地球が「丸い」ことと「回っている」ことが原因らしいんだ。2026年の共通テストでも出た「昔のモデルと現実の違い」にも注目しながら、地球規模の風の謎を解き明かそう! PON!
1. 緯度ごとのエネルギー収支と熱輸送
地球は球体であるため、緯度によって太陽から受けるエネルギー量が異なります。
- 低緯度(赤道付近): 太陽光を真上から受けるため、入ってくる熱(太陽放射)が出ていく熱(地球放射)より多く、エネルギー過剰(熱があまる)になります。
- 高緯度(極付近): 太陽光が斜めから差し込むため、入ってくる熱より出ていく熱の方が多く、エネルギー不足(熱が足りない)になります。
このままでは赤道は無限に熱く、極は無限に冷えてしまいます。そうならないのは、大気と海洋の大循環が、余った熱を赤道から極へ運び(熱輸送)、地球全体の温度バランスを保っているからです。
2. 大気大循環のモデル:ハドレーの誤算と現実
では、熱を運ぶための空気の流れ(循環)はどのような形をしているのでしょうか。ここが2026年共通テストで問われた最重要ポイントです。
コレクトの物理講義:なぜ3つの細胞に分かれるのか?
【1735年のハドレーのモデル(単一細胞循環)】
もし「地球が自転していない」ならば、赤道で温められた空気は上昇して極まで移動し、極で冷やされて下降して赤道に戻るという、北半球全体でたった1つの巨大な循環になるはずです。
【現実の地球(3つの細胞循環)】
しかし、現実はそうなりません。地球は自転しているため、動く物体には進行方向に対して直角右向き(北半球)に曲げようとする見かけの力、転向力(コリオリの力)が働きます。
赤道から極へ向かおうとした上空の風は、コリオリの力によって東向き(西風)に変えられてしまい、極まで到達できずに緯度30度付近で滞留して沈降してしまいます。
その結果、循環は「低緯度」「中緯度」「高緯度」の3つのセル(細胞)に分断されてしまうのです。
3. 3つの循環と地上の風系
こうして形成される3つの循環と、それに伴って地上に吹く恒常風(一年中吹く風)を整理しましょう。
| 循環(セル)の名前 | 緯度とメカニズム | 地上の気圧帯 | 地上の風系 |
|---|---|---|---|
| ハドレー循環 (直接循環) |
赤道 〜 緯度30度 赤道で上昇した空気が、コリオリの力で曲げられ緯度30度付近で下降する。 |
・赤道:熱帯収束帯(低気圧・多雨) ・30度:亜熱帯高圧帯(高気圧・乾燥) |
貿易風(ぼうえきふう) (北半球では北東風) |
| フェレル循環 (間接循環) |
緯度30度 〜 60度 ハドレー循環と極循環に挟まれて受動的に回る「見かけの循環」。 |
・60度:高緯度低圧帯 (寒帯前線) |
偏西風(へんせいふう) (西寄りの風) |
| 極循環 (直接循環) |
緯度60度 〜 極 極で冷やされた重い空気が下降し、低緯度へ吹き出す。 |
・極:極高圧帯 | 極偏東風(きょくへんとうふう) (東寄りの風) |
4. 【発展】コリオリの力と地衡風
上空の風や海流の向きを理解するには、地球の自転による影響を物理的に捉える必要があります。
コレクトの発展解説:風はなぜ等圧線と平行に吹く?
空気は本来、気圧の高い方から低い方へ真っ直ぐ動こうとします(気圧傾度力)。
しかし、動き出すとすぐにコリオリの力(北半球では進行方向の右向き)が働き、風向が右へ右へと曲げられます。
最終的に、気圧傾度力とコリオリの力が一直線上で逆向きに釣り合う状態になると、風はそれ以上曲がらず、等圧線に対して平行に吹き続けます。この風を地衡風(ちこうふう)と呼びます。
※偏西風が西から東へ(等圧線に沿って)吹いているのは、まさにこの地衡風の状態だからです。
5. 地上の高気圧・低気圧と温帯低気圧
地上の風(摩擦の影響)
上空の地衡風とは異なり、地表付近では地面との摩擦によって風速が落ち、コリオリの力が弱まります。その結果、力の釣り合いが崩れ、風は等圧線を横切って斜めに吹きます。
- 低気圧: 反時計回りに、中心に向かって吹き込む(上昇気流が発生 → 雲ができる)。
- 高気圧: 時計回りに、中心から外へ吹き出す(下降気流が発生 → 晴れる)。
温帯低気圧
中緯度(日本付近)では、南からの暖かい空気と北からの冷たい空気がぶつかり合い、寒帯前線(停滞前線)ができます。上空の偏西風が蛇行すると、この前線の一部に渦ができ、温帯低気圧が発生します。東側には温暖前線、西側には寒冷前線を伴い、偏西風に乗って西から東へ移動しながら天気を変化させます。
ちさまると挑戦! 大気循環の謎
ちさまる
2026年の共通テストで出た「モデルの限界」を問う問題って、暗記じゃ解けないよね。
「もし地球が自転していなかったら?」という仮定と、「現実」を比べる思考実験に挑戦してみよう!
【例題1】ハドレー循環とコリオリの力(2026年 共通テスト思考力問題)
1735年、ハドレーは「赤道で上昇した空気は、上空を極まで移動して下降し、地表付近を赤道に向かって戻る」という単一の循環モデルを提唱した。しかし、現実の地球の大気循環は、低緯度・中緯度・高緯度の3つの細胞に分かれている。
この違いが生じる主な物理的原因に関する記述として、最も適当なものを1つ選べ。
- 地球表面には海と陸が複雑に分布しており、陸地の方が暖まりやすいため、海陸風のような局地的な循環が卓越し、大規模な循環が分断されるから。
- 赤道付近の上昇気流が強力すぎて成層圏を突き抜け、宇宙空間へ空気が散逸してしまうため、極まで到達する空気の量が不足するから。
- 地球が自転しているため、赤道から極へ向かう上空の風にコリオリの力が働き、進路が東寄りに曲げられて中緯度付近で滞留・沈降してしまうから。
- 極付近の冷たい空気は密度が大きく、赤道からの暖気と混ざり合うことができないため、物理的な壁となって循環を阻害するから。
解答と解説を見る
【解答】 3
【解説】
ハドレーのモデルが破綻する最大の理由は「地球の自転によるコリオリの力」です。赤道から極を目指して北上する風は、コリオリの力によって進行方向右向き(東向き)に曲げられます。その結果、緯度30度付近でほぼ真西から吹く風(上空の偏西風)となって北上が止まり、空気が溜まって地上へ沈み込みます(亜熱帯高圧帯)。これにより、赤道〜30度だけの閉じた循環(ハドレー循環)が形成され、極までの単一循環は成立しなくなります。
【例題2】地上の風系と気圧帯(基本〜標準)
地球上の風系と気圧帯の対応として、誤っているものを1つ選べ。
- 赤道付近には、ハドレー循環の上昇気流によって熱帯収束帯が形成され、雲が発生しやすく雨が多い。
- 緯度30度付近には、ハドレー循環の下降気流によって亜熱帯高圧帯が形成され、世界的な砂漠が分布している。
- 中緯度地域(日本付近)の地上では、亜熱帯高圧帯から高緯度低圧帯に向かって吹き出す風が、コリオリの力で曲げられ、東寄りの貿易風となる。
- 高緯度地域(緯度60度付近)では、偏西風と極偏東風が衝突して寒帯前線が形成され、低気圧が発生しやすい。
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【解答】 3
【解説】
中緯度地域(日本付近)で吹く地上の風は、西寄りの偏西風です。「東寄りの貿易風」は、緯度0度〜30度の低緯度地域で吹く風のことです。なお、1, 2, 4の記述はすべて大気大循環の特徴を正しく説明しています。
ちさまるの総仕上げ! 練習問題
風の名前、気圧帯、そしてコリオリの力。全部つながってるからセットで覚えよう!
問1(選択・基本)
北半球の地表面付近において、高気圧の中心から吹き出す風の向きとして、最も適当なものはどれか。
- 時計回りに渦を巻きながら吹き出す。
- 反時計回りに渦を巻きながら吹き出す。
- 時計回りに渦を巻きながら吹き込む。
- 等圧線と平行に吹き出す。
コレクトからの挑戦状(思考力・論述)
問2(記述・発展)
赤道付近(熱帯収束帯)と緯度30度付近(亜熱帯高圧帯)では、年間の降水量に大きな違いが見られる。それぞれの地域でどのような気流(上昇・下降)が生じているかに触れながら、その理由を60字以内で説明せよ。
問3(正誤判定・復習)
次の文章の正誤を判定せよ。
「上空の風(地衡風)は、気圧傾度力とコリオリの力が釣り合うことで等圧線に平行に吹くが、地上の風は摩擦力の影響を受けるため、気圧傾度力・コリオリの力・摩擦力の3つが釣り合い、等圧線を斜めに横切って低圧側へ吹き込む。」
練習問題の解答と解説
問1:i
【解説】北半球では、コリオリの力により風は進行方向の右へ曲がります。高気圧からは風が吹き出すため、右へねじれて「時計回り」になります。逆に低気圧へは吹き込むため「反時計回り」になります。
問2:解答例
赤道では上昇気流により雲ができやすく多雨となるが、緯度30度付近では下降気流により雲ができにくく乾燥するため。(55字)
【解説】「上昇気流=雲ができる=雨」「下降気流=雲が消える=晴れ・乾燥」という気象の基本原理を、大気大循環の場所(緯度)と結びつける問題です。これが世界の熱帯雨林と砂漠の分布を決定づけています。
問3:正しい
【解説】地上の風の力の釣り合いに関する正確な記述です。摩擦力が加わると風速が落ち、コリオリの力(風速に比例する)が弱まるため、気圧傾度力(低圧側に引く力)が勝ってしまい、風は等圧線を斜めに横切って低気圧の方へ吸い込まれていきます。