地学基礎㉓:地学で用いる数学(資料・接続編)
ちさまる
「地学なのに、なんで数学が必要なの!?」って思うかもしれないね。
でも、星までの途方もない距離を測ったり、地震の恐ろしいエネルギーを計算したりするには、「三角比」や「指数・対数」っていう数学の強力なツールが絶対に必要なんだ!
共通テストの計算問題や、二次試験の考察問題をスラスラ解くための「数学の武器」を手に入れよう! PON!
1. 三角比・三角関数(角度から距離を求める)
直角三角形の辺の長さの比を表すのが三角比(サイン、コサイン、タンジェント)です。地学では、「直接測れない巨大な距離を、見えた角度から計算する」ために頻繁に利用されます。
地学での主な応用例
- エラトステネスの地球測定: 太陽の南中高度(角度)の差から地球の中心角を求め、円弧の長さの比例計算(扇形の性質)を利用して地球の全周を求めました。
- 断層の傾斜角: 地層がどれくらい傾いているか(走向・傾斜)を測る際、三角関数を用いて地下の深さや広がりを立体的に計算します。
コレクトの数学講義:年周視差と微小角の近似
恒星までの距離を測る「年周視差(ねんしゅうしさ)」は、三角比の極致です。
地球が太陽の周りを公転することで、半年たつと地球の位置は約3億km移動します。この両端から遠くの星を見たときの「ズレの角度」を年周視差 $p$(単位は秒角)と呼びます。
星までの距離 $d$、太陽と地球の距離を $1\text{AU}$ とすると、直角三角形ができ、$\tan p = \frac{1\text{AU}}{d}$ となります。
ここで、星までの距離はあまりに遠く、角度 $p$ は極めて小さいため、数学の「微小角の近似($\tan \theta \approx \theta$)」が成り立ちます。
その結果、距離 $d$(パーセク)と年周視差 $p$(秒角)の間には、$d = \frac{1}{p}$ という極めて美しい反比例の反比例の式が成り立ちます。
2. 指数と対数(極大・極小・スケールの変換)
地学が扱う対象は、「地球の質量(約 $6 \times 10^{24} \text{kg}$)」のような極大なものから、「原子核の大きさ($10^{-15} \text{m}$)」のような極小のものまで幅広いため、指数($10^n$)での表記が不可欠です。
指数関数の応用:半減期(放射性同位体)
岩石の絶対年代を測る際、放射性同位体が半分に減る時間(半減期)を利用します。半減期を $T$、経過時間を $t$ とすると、残っている親元素の量 $N$ は指数の式で表されます。
$$ N = N_0 \times \left(\frac{1}{2}\right)^{\frac{t}{T}} $$
半減期が3回経過すれば、残りは $(1/2)^3 = 1/8$ になる、という計算は共通テストの超頻出問題です。
対数(ログ)の応用:地震のマグニチュードと星の等級
桁外れに変化する数値を、人間が扱いやすい「1, 2, 3...」というスケールに圧縮する魔法の道具が対数($\log$)です。
コレクトのデータ解析:対数スケールの真実
① 地震のマグニチュード(M)
地震のエネルギー $E$ とマグニチュード $M$ は、以下の対数方程式で結ばれています。
$$ \log_{10} E = 4.8 + 1.5 M $$
この式の右辺の「$1.5 M$」に注目してください。
Mが $1.0$ 増えると、$\log_{10} E$ の値は $1.5$ 増えます。対数を外すと、$E$ は $10^{1.5}$ 倍、つまり約31.6倍になります。
Mが $2.0$ 増えれば、$E$ は $10^{3.0}$ 倍、つまりぴったり1000倍になります。
② 星の等級(ポグソンの式)
星の明るさの「等級」も対数スケールです。古代ギリシャのヒッパルコスが定めた「1等星は6等星の100倍明るい」という基準を数式化したものです。等級が1小さくなると、明るさは $\sqrt[5]{100} \approx 2.512$ 倍になります。
ちさまると挑戦! 地学×数学の計算問題
ちさまる
公式の意味がわかれば、地学の計算問題はパズルみたいに解けるよ! 国公立大の二次試験や、共通テストの難問で差がつく計算に挑戦だ!
【例題1】年周視差と距離(国公立大 二次試験レベル)
ある恒星を半年間隔で観測したところ、天球上の位置が最大で $0.2$ 秒角 ズレていることがわかった。この星までの距離は何パーセク($\text{pc}$)か。また、それは何光年か。有効数字2桁で答えよ。(ただし、1パーセク = 3.26光年とする)
解答と解説を見る
【解答】 $10\text{pc}$、および $33光年$
【解説】
年周視差 $p$ は、半年間の「最大ズレ角」の半分として定義されます。
最大ズレが $0.2$ 秒角なので、年周視差 $p = 0.1$ 秒角 です。
距離 $d \text{ (pc)}$ は、公式 $d = 1 / p$ より、
$d = 1 / 0.1 = 10 \text{ pc}$ となります。
光年に換算すると、$10 \times 3.26 = 32.6光年$。有効数字2桁に丸めて $33光年$ となります。
【例題2】マグニチュードとエネルギー(共通テスト頻出)
マグニチュード(M)9.0 の地震が放出したエネルギーは、マグニチュード 7.0 の地震が放出したエネルギーの何個分に相当するか。最も適当な数値を選べ。
- 2 個分
- 32 個分
- 64 個分
- 1000 個分
解答と解説を見る
【解答】 4
【解説】
マグニチュードの差は $9.0 - 7.0 = 2.0$ です。
対数スケールの法則($\log_{10} E = 4.8 + 1.5M$)により、「Mが2.0大きくなると、エネルギーは $10^{(1.5 \times 2)} = 10^3 = 1000$ 倍」になります。
したがって、M7.0 の地震 1000個分 のエネルギーが、M9.0 の巨大地震1回分に相当します。(Mが1.0の差なら約32倍です)。
ちさまるの総仕上げ! 練習問題
半減期の計算と、星の等級の対数スケール。この2つは絶対にマスターしておこう!
問1(計算・基本)
ある岩石に含まれる放射性同位体(親元素)の量が、岩石が形成された当時の $1/16$ に減少していた。この同位体の半減期を $7.0 \times 10^8$ 年としたとき、この岩石が形成されたのは何年前か。
コレクトからの挑戦状(思考力問題)
問2(記述・発展)
「絶対等級」とは、恒星をすべて地球から $10\text{pc}(32.6光年)$ の距離に置いたと仮定したときの明るさ(等級)である。ある恒星の「見かけの等級」が $2.0$ 等であり、「絶対等級」が $-3.0$ 等であった。この恒星は、地球から $10\text{pc}$ よりも遠い場所にあるか、近い場所にあるか。その理由とともに60字以内で説明せよ。
練習問題の解答と解説
問1:$2.8 \times 10^9$ 年前(28億年前)
【解説】残量が $1/16$ ということは、$(1/2)^4 = 1/16$ なので、半減期が「4回」経過しています。
したがって、年齢は $(7.0 \times 10^8) \times 4 = 28.0 \times 10^8 = 2.8 \times 10^9$ 年となります。
問2:解答例
10pcに近づけると、2.0等から-3.0等へと数値が小さく(明るく)なるため、現在は10pcよりも遠い場所にある。(56字)
【解説】対数スケールにおいて、等級の「数値が小さいほど明るい」というルールと、光の逆2乗の法則を組み合わせた論理問題です。見かけ(暗い)→絶対(明るい)ということは、実際は基準距離(10pc)よりも遠くに存在している証拠です。