地学基礎⑭:海水の運動と大循環
ちさまる
海の水って、ただ波打ってるだけじゃなくて、地球全体をぐるぐる旅しているんだって!
表面を流れる「黒潮」みたいな早い流れもあれば、深海を何千年もかけてゆっくり流れる「深層循環」もあるらしいよ。
特に2026年の共通テストでは、深海の水の「年齢(沈み込んでからの時間)」を酸素の量から推理する超難問が出たんだ。海流の謎を一緒に解き明かそう! PON!
1. 海洋の層構造(水温の鉛直分布)
海水を深さごとの水温で分けると、大きく3つの層に区分されます。
| 層の名前 | 深さの目安 | 特徴 |
|---|---|---|
| 表層混合層 | 海面 〜 数百m | 太陽放射で温められ、波や風によってかき混ぜられるため、水温が高く一定している層。 |
| 水温躍層 (やくそう) |
数百m 〜 約1000m | 深くなるにつれて水温が急激に低下する層。冷たく重い水の上に温かく軽い水が乗っているため、対流が起きにくく安定している。 |
| 深層 | 約1000m 〜 海底 | 水温が2℃〜4℃程度と非常に低く一定している層。季節や緯度による変化をほとんど受けない。 |
2. 海洋の表層を巡る循環(風成循環)
海面付近の流れ(海流)は、主に風(卓越風)によって引き起こされます。これを風成循環(ふうせいじゅんかん)と呼びます。
- 駆動力: 低緯度の貿易風(東風)と、中緯度の偏西風(西風)が海面を引きずり、巨大な渦を作ります。
- 亜熱帯循環: 北半球では時計回り、南半球では反時計回りの巨大な還流となります。
- 西岸強化(せいがんきょうか): 地球の自転(コリオリの力)の影響で、大洋の西側(大陸の東岸)を流れる海流は、幅が狭く、流れが非常に速くなります。日本の南岸を流れる黒潮(日本海流)がその代表例です。
コレクトのデータ解析:黒潮の特定(2023年共テ傾向)
実際の水温分布図(等温線図)から黒潮の位置を読み取る問題が出題されています。
黒潮は暖かい水を北へ運ぶ「暖流」です。地図上で等温線が北に向かって大きく盛り上がっている場所や、水温が急激に変わる場所(潮目)の南側にある最も水温が高い帯状のエリアを探すことがポイントです。
3. 海洋の深層を巡る循環(熱塩循環)
深層の海水は風では動きません。水温と塩分濃度の違いによる「密度の差」でゆっくりと沈み込み、地球全体を巡っています。これを熱塩循環(ねつえんじゅんかん)または深層循環と呼びます。
深層水の形成(沈み込み)
海水が深層へ沈み込むためには、非常に冷たく、塩分が濃く、重くなる必要があります。地球上でこの条件を満たす場所はごく限られています。
- 北大西洋北部(グリーンランド沖): メキシコ湾流によって運ばれた塩分の高い水が冷やされ、北大西洋深層水となって沈み込みます。
- 南極周辺(ウェッデル海など): 海水が凍る(結氷する)際、塩分が氷から排出されて周囲の海水が濃くなり、極寒の大気で冷やされて世界で最も重い南極底層水となって沈み込みます。
※北太平洋では、雨が多く塩分が薄いため、大規模な深層水の沈み込みは起きません。
4. 【発展】深層循環と溶存酸素(2026年共テ激難化対応)
深層循環は「海洋のコンベアベルト」とも呼ばれ、約1000年〜2000年かけて地球を一周します。この「海水の年齢」を推定する手がかりが溶存酸素量です。
コレクトの化学解析:酸素と時間の関係
① 酸素の供給源は「海面」だけ
海水中の酸素は、大気から溶け込むか、表層の植物プランクトンの光合成によって供給されます。光の届かない深層では、酸素は増えません。
② 深海では酸素は「消費」される一方
深海には、表層から落ちてきた生物の死骸(有機物)を分解するバクテリアなどがいます。彼らは呼吸によって酸素を消費し続けます。
③ 結論:古い水ほど酸素が少ない
沈み込んだ直後の海水(新しい深層水)は、表層の酸素をたっぷり持っています。しかし、深海を旅する時間が長くなるほど、呼吸によって酸素が消費され続け、濃度が減っていきます。
つまり、沈み込み場所である「北大西洋」の深層水は酸素が多く、そこから最も遠く、旅の終着点である「北太平洋」の深層水は酸素が最も少ない(最も古い水)のです。
5. 地球上の水循環と塩分分布(2025年共テ傾向)
海水中の塩分濃度(平均約3.4%〜3.5%)は、場所によってわずかに異なります。この違いを生む主な要因は「蒸発量」と「降水量」のバランスです。
- 塩分が高くなる場所: 蒸発量 > 降水量 の地域。
中緯度(緯度20〜30度)の亜熱帯高圧帯は、晴天が続き蒸発が盛んなため、塩分が濃くなります。 - 塩分が低くなる場所: 降水量 > 蒸発量 の地域。
赤道付近(熱帯収束帯)や高緯度地域、また大河川の河口付近は、真水が大量に加わるため塩分が薄くなります。
ちさまると挑戦! 海の謎解きパズル
ちさまる
塩分の濃さや酸素の量…、目に見えない成分の違いから、地球規模の水の動きを推理するんだね。最新の共通テストの傾向に合わせた思考問題にチャレンジしよう!
【例題1】塩分分布の論理(2025年 共通テスト傾向)
世界の海洋表層における塩分分布について述べた次の文章の空欄( ア )・( イ )に入る語句の組み合わせとして、最も適当なものを1つ選べ。
「海水の塩分は、主に海面での( ア )によって決まる。赤道付近では( ア )がマイナス(蒸発より降水が多い)となるため塩分は低いが、緯度20度〜30度付近の海域では、大気の大循環によって( イ )が形成されているため、( ア )がプラスとなり、塩分は最も高くなる。」
- (ア)蒸発量引く降水量 (イ)熱帯収束帯
- (ア)蒸発量引く降水量 (イ)亜熱帯高圧帯
- (ア)降水量引く蒸発量 (イ)熱帯収束帯
- (ア)降水量引く蒸発量 (イ)亜熱帯高圧帯
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【解答】 2
【解説】
塩分を高くするのは「蒸発(水を抜く)」、低くするのは「降水(水を足す)」です。したがって、塩分を決める指標は「蒸発量 - 降水量」となります。
緯度20〜30度付近は、ハドレー循環の下降気流によって亜熱帯高圧帯ができ、乾燥して蒸発が盛んなため、世界で最も塩分が高い海域となります。
【例題2】深層循環と酸素濃度(2026年 共通テスト激難化類題)
次の図は、海洋の深層循環(コンベアベルト)の経路を模式的に示したものである。地点A(北大西洋)、地点B(インド洋)、地点C(北太平洋)の深層(水深4000m付近)における溶存酸素濃度を測定したとき、その濃度の高い順に並べたものとして、最も適当な推論を1つ選べ。
(※注:深層循環は北大西洋で沈み込み、南極周辺を経由してインド洋・太平洋へ北上するものとする)
- A > B > C
- C > B > A
- A > C > B
- B > A > C
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【解答】 1
【解説】
「沈み込んでからの時間が短い(新しい水)ほど酸素が多く、時間が経つ(古い水)ほど生物の呼吸で消費されて酸素が減る」という法則を使います。
・地点A(北大西洋):深層水が沈み込む始発点に近い → 最も新しい → 酸素最多。
・地点B(インド洋):途中経過点 → 酸素は中程度。
・地点C(北太平洋):循環の終着点(最も遠い) → 最も古い(約1000年以上経過) → 酸素最少。
したがって、酸素濃度は A > B > C の順になります。
ちさまるの総仕上げ! 練習問題
表層の風による循環と、深層の密度による循環。この2つをしっかり区別するのがポイントだよ!
問1(選択・基本)
海洋の循環に関する記述として、最も適当なものを1つ選べ。
- 海洋の表層循環は、主に海水の密度差によって駆動されている。
- 北太平洋の亜熱帯循環は、時計回りの還流となっている。
- 深層循環は、数十年程度の短い周期で地球を一周している。
- 黒潮(日本海流)は、北太平洋の東岸を流れる寒流である。
問2(記述・標準)
海洋において、深くなるにつれて水温が急激に低下する層を何と呼ぶか。また、その層が対流を起こしにくく安定している理由を、密度の観点から簡潔に答えよ。
コレクトからの挑戦状(国公立大 二次試験・論述)
問3(論述・発展)
北大西洋のグリーンランド沖や南極周辺の海域で、表層の海水が深層へと沈み込む(深層水が形成される)ための物理的な条件を、「水温」と「塩分」という2つの語句を用いて55字以内で説明せよ。
練習問題の解答と解説
問1:ii
【解説】
i:表層循環は「風」によって駆動されます(密度差は深層循環)。
ii:正解。北半球の亜熱帯循環は時計回りです。
iii:深層循環は約1000年〜2000年という非常に長い周期です。
iv:黒潮は北太平洋の「西岸」を流れる「暖流」です。
問2:水温躍層(水温躍層は上部が暖かく軽く、下部が冷たく重いため)
【解説】水温躍層では、軽い水(温かい)が上に、重い水(冷たい)が下にある構造のため、上下が入れ替わる対流が物理的に起きにくく、非常に安定しています。
問3:解答例
大気によって冷却されて水温が低くなり、結氷などによって塩分が高くなることで、海水の密度が大きくなる条件。(52字)
【解説】深層水が沈み込むためには「重くなる(密度が大きくなる)」必要があります。密度を大きくする要因は「低温」と「高塩分」の2つです。この両方が揃う極域の海でのみ、大規模な沈み込みが発生します。