地学基礎②:プレートの運動(プレートテクトニクス①)
ちさまる
「地面が動いている」なんて、普段は全く感じないよね。
でも、大昔の地球には巨大な1つの大陸しかなかったって本当!? 今回は、地球の表面を覆う岩盤「プレート」がなぜ動き、どうやってその証拠を見つけたのかを探究するよ。二次試験でも狙われる「速度計算」もバッチリ攻略しよう! PON!
1. 大陸移動説:すべての始まり
1912年、ドイツの気象学者ウェゲナーは、「現在の大陸は、かつてパンゲアという一つの巨大な超大陸であり、それが分裂・移動して現在の配置になった」という大陸移動説を提唱しました。
ウェゲナーが提示した4つの証拠(入試頻出!)
- 海岸線の類似:大西洋を挟んだ南アメリカ大陸東岸とアフリカ大陸西岸の形が、ジグソーパズルのように一致する。
- 古生物の化石の分布:海を渡れないはずの爬虫類(メソサウルス)や植物(グロソプテリス)の化石が、遠く離れた南米・アフリカ・インド・南極から共通して発見される。
- 地質構造の連続性:北アメリカの山脈とヨーロッパの山脈の地層や岩石の連なりが、大西洋を挟んで一致する。
- 古気候の痕跡(氷河):現在の熱帯付近(インドやアフリカ)に、約3億年前の氷河の削った跡(擦痕)や氷河堆積物が残っている。
しかし、当時の物理学では「巨大な大陸を動かす原動力」を説明できず、この説は一度否定されてしまいます。その後、1950年代に古地磁気学(岩石に残る昔の磁場の研究)が発展したことで、大陸移動説は「プレートテクトニクス」として見事に復活を遂げることになります。
2. マントル対流と熱の輸送
では、プレートを動かす原動力は何なのでしょうか? その答えはマントル対流です。
コレクト
地球内部は非常に高温です。この熱の起源は、地球誕生時の微惑星衝突の熱(名残)と、地球内部に含まれる放射性同位体(ウランやトリウムなど)が崩壊するときに出す熱です。
地球はこの内部の熱を宇宙空間へ逃がそうとしています。マントルは固体ですが、長い時間をかけると流動する性質(塑性変形)を持っています。下部の熱いマントルは密度が小さくなり上昇し、冷やされた上部のマントルは密度が大きくなり下降します。この熱対流(アセノスフェアの流動)の上に、硬い岩盤であるプレート(リソスフェア)が乗っているため、プレートが引きずられて移動するのです。
※高認や共通テストでも、「マントルは液体である」というひっかけの正誤問題がよく出題されるので注意してください。マントルは固体です。
3. 【発展】地震波トモグラフィー:地球内部を透視する
現代では、マントル内部の対流の様子を視覚的に捉える技術があります。これが地震波トモグラフィーです。医療用のCTスキャンがX線を使うように、地球の内部を無数の地震波の伝わり方を使って立体的に画像化します。
コレクトの解析:地震波速度の異常
地震波の速度は、岩石の温度によって変化します(二次試験頻出!)。
- 温度が低い(冷たくて硬い)場所:地震波の速度は速くなる(画像では青色で示されることが多い)。
- 温度が高い(熱くて柔らかい)場所:地震波の速度は遅くなる(画像では赤色で示されることが多い)。
この解析により、日本海溝から沈み込んだ冷たい太平洋プレートが、マントルの途中(深さ約660km付近)で一時的に滞留している様子などが鮮明に確認されています。
4. プレートの沈み込みとプルーム
プレートテクトニクスは地球の表層(深さ約100km程度)の運動を説明しますが、地震波トモグラフィーによって、より深いマントル全体の巨大な対流運動が明らかになりました。これをプルームテクトニクスと呼びます。
- コールドプルーム:海溝から沈み込み、マントル遷移層で滞留していた冷たいプレートの残骸が、塊となって一気にマントル最下部(外核との境界)へ落下していく下降流。
- ホットプルーム:コールドプルームの落下に押し出されるように、または外核からの熱を受けて、マントル最深部から地表に向かって上昇してくる巨大な高温のキノコ状の上昇流。
5. 過去と現在のプレート運動(ホットスポットとGNSS)
プレートが実際に動いている証拠は、現在の観測と過去の地形の両方から証明できます。
① 現在の運動:GNSS(全球測位衛星システム)
GPSなどの人工衛星を利用したGNSS観測網により、地表の動きをミリメートル単位で測定できます。例えば、ハワイ諸島は太平洋プレートに乗って、年間約8cmの速度で日本(北西方向)に向かって移動していることがリアルタイムで確認されています。
② 過去の運動:ホットスポット
プレート境界ではない場所(プレートのド真ん中)に孤立して存在する火山があります。これをホットスポットと呼びます。
ホットスポットのマグマの供給源はマントル深部にあるため、位置が動きません。しかし、その上を覆うプレートは移動するため、海底には「マグマが突き抜けてできた火山の跡」が一列に並びます。
ハワイ諸島から天皇海山列へと続く火山の連なりは、このホットスポットの活動によって形成されました。火山の年代と距離を調べることで、過去数千万年にわたるプレートの移動速度と方向を正確に計算することができます。
ちさまると挑戦! プレートの移動速度を調べてみよう
ちさまる
ここからは計算問題! プレートの速度を求める問題は、センター試験や共通テスト、二次試験でも超定番なんだ。単位の変換(km から cm)に気をつけて挑戦しよう!
【例題1】プレートの拡大速度(センター・共テ類題)
ある中央海嶺(プレートが生まれる場所)から $300\text{km}$ 離れた海底の海洋地殻をボーリング調査したところ、一番下の岩石の年代が $1500万年$ 前のものであることが分かった。このとき、この海嶺が拡大する速度(両側のプレートが離れていく速度)は、年間何 $\text{cm}$ か。最も適当なものを選べ。
① 1.0 cm/年 ② 2.0 cm/年 ③ 4.0 cm/年 ④ 8.0 cm/年
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【解答】 ③ 4.0 cm/年
【解説】
1. まず、片側のプレートの移動速度を求めます。速度 = 距離 ÷ 時間。
2. 距離を $\text{km}$ から $\text{cm}$ に直します。$1\text{km} = 1000\text{m} = 100,000\text{cm} = 10^5\text{cm}$。
$300\text{km} = 300 \times 10^5\text{cm} = 30,000,000\text{cm}$。
3. 時間は $1500万年 = 15,000,000年$。
4. 速度 $v = 30,000,000\text{cm} \div 15,000,000年 = 2.0\text{cm/年}$。
5. ここが引っかけ! 問われているのは「海嶺が拡大する速度(両側が離れる速度)」です。海嶺を中心に対称に移動していると仮定すると、両側のプレートはそれぞれ $2.0\text{cm/年}$ で遠ざかるため、相対的な拡大速度はその2倍の $4.0\text{cm/年}$ となります。
【例題2】ホットスポットとプレート運動
太平洋プレート上にあるハワイ島の下にはホットスポットが存在する。ハワイ島から北西方向に直線距離で約 $3300\text{km}$ 離れた位置にあるミッドウェー島の岩石の生成年代を調べたところ、約 $2750万年$ 前であった。この2750万年間の太平洋プレートの平均移動速度は年間何 $\text{cm}$ と推定されるか。
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【解答】 約 12 cm/年
【解説】
ホットスポットはマントル深部に固定されているため、ミッドウェー島は $2750万年$ 前には現在のハワイ島の位置(ホットスポットの真上)にあったことになります。
つまり、プレートは $2750万年$ かけて $3300\text{km}$ 移動しました。
距離:$3300\text{km} = 3300 \times 10^5\text{cm} = 330,000,000\text{cm}$
時間:$27,500,000年$
速度 $v = \frac{330,000,000}{27,500,000} = \frac{3300}{275} = 12 \text{cm/年}$
(※ハワイ-天皇海山列の配列が途中で「くの字」に折れ曲がっていることから、約4300万年前に太平洋プレートの移動方向が北方向から西北西方向へと大きく変化したことも、二次試験でよく問われます。)
ちさまるの総仕上げ! 練習問題
最後は知識の確認と、難関大学で出題される「相対速度」の思考問題だ!
問1(選択・基本)
ウェゲナーの大陸移動説を支持する証拠として、彼が提唱した当時に用いられたものはどれか。誤っているものを1つ選べ。
- 南アメリカ大陸東岸とアフリカ大陸西岸の海岸線の形状の一致。
- 氷河の擦痕や氷河堆積物の分布の連続性。
- 深海掘削によって得られた海洋地殻の年代が、海嶺から離れるほど古いこと。
- メソサウルスなどの古生物化石が、現在海を隔てた複数の大陸から発見されること。
コレクトからの挑戦状(思考力)
問2(記述・発展)プレートの相対運動ベクトル
3つのプレートA, B, Cが1点で接する境界(トリプルジャンクション)がある。ある固定点から見たとき、プレートAは東へ年間 $3\text{cm}$、プレートBは西へ年間 $4\text{cm}$ 移動している。
このとき、「プレートAに乗っている観測者から見た、プレートBの相対的な移動速度と方向」を答えよ。
問3(正誤判定)
次の文章の正誤を判定せよ。
「地震波トモグラフィーの解析によれば、マントル中を下降する冷たいプレート(スラブ)の内部では、周囲のマントルよりも温度が高いため、地震波の伝わる速度が遅くなることが確認されている。」
練習問題の解答と解説
問1:iii
【解説】「海洋地殻の年代が海嶺から離れるほど古い」というのは、1960年代に提唱された「海洋底拡大説」の証拠であり、ウェゲナーの時代(1912年)には深海掘削の技術がなく、知られていませんでした。
問2:西へ 年間 7cm
【解説】相対速度のベクトル計算です。「Aから見たBの速度」は、$\vec{v_B} - \vec{v_A}$ で求まります。
東向きを正($+$)とすると、
プレートAの速度 $v_A = +3\text{cm/年}$
プレートBの速度 $v_B = -4\text{cm/年}$
Aから見たBの相対速度 $= v_B - v_A = (-4) - (+3) = -7\text{cm/年}$。
マイナスは西向きを表すため、西へ $7\text{cm/年}$ となります。(直感的に、逆方向に動くすれ違いの電車に乗っているイメージを持てば、互いの速度を足し合わせた速さで遠ざかることが分かります)。
問3:誤り
【解説】地震波の速度は、温度が低い(冷たく硬い)ほど速くなります。沈み込むプレートは周囲のマントルよりも冷たい(温度が低い)ため、地震波速度は速くなります。「温度が高いため」「速度が遅くなる」という2箇所が逆です。